ニクソンショックで製販懇談会

 昭和46年8月16日に発表されたニクソン米大統領の金との兌換を停止するドル防衛策は,いわゆるニクソンショックとして我が国経済に大きな影響を与えた。このため,油市場理事会(金田勝次理事長)は日本油脂協会に対して,メーカーサイドの今後の対策と方針について考え方を聞くための製販懇談会の開催を申し入れた。第1回懇談会はニクソンショック冷めやらぬ8月26日に経団連会館において開催され,鈴木重明日油協会長以下各社のトップが出席し,生産過剰にならないよう,また油価を適正に引き上げるよう努力する旨が語られた。その後年末まで8回にわたって製販懇談会が開かれ,この年の事跡報告書では「製販懇談会が本当に腹を割った話し合いが出来たのは,これが始めてであり,且つこのように長期にわたって行われたことも,昭和25年当市場再開以来油脂業界にとって始めての出来事でありました」と述べられている。
 ただ,続けて「10月以降は再び油価がくずれて果てしない泥沼に入り込んだことは,返すがえすも残念なことであります」とされており,油脂業界の競争体質の根強さを感じさせた1年でもあった。
 また,翌47年5月23日から京都で開催された世界製油業者大会には,多数が油脂販売業者から参加し,製販協調の実を挙げることができた。

ごま油メーカーとの懇談会開催

 昭和54年9月11日,油商会館においてごま油メーカーとの懇談会を開催した。大豆油を生産する大手メーカーとの製販懇談会は,頻繁に実施してきたが,胡麻油メーカーとの改まっての懇談会はこれまで1度も行ったことがなかった。胡麻油は荏胡麻油と並び,わが国でもっとも古くから使われてきた植物油であり,歴史のある搾油メーカーが多く,わが国の植物油の歴史を具現化している観がある。大豆白絞油のように安売りもほとんどなく,製販の関係がもらともスムーズに運んでいた業界でもある。ところが,世界中で健康に良い胡麻油が見直され,産地の原料価格が上がるなど変化が見え始めたため,油問屋としても各種の情報を知る必要度が高くなったことで,懇談会が開かれた。